
日本総合住生活株式会社 様
取締役
岩田 様
総務人事部長 兼 ダイバーシティ推進室長
外村 様
総務人事部 ダイバーシティ推進室
課長
八森 様
森田 様
※所属部署・役職は取材時(2026年4月)時点のものです。
- 研修・講演・セミナー
- ハンドブック
日本総合住生活株式会社は、UR賃貸住宅や分譲住宅の管理・修繕を担い、集合住宅管理のパイオニアとして団地にお住いのお客さまの暮らしを支えてきました。一方で、技術職の比率が比較的高く、結果として男性比率も高い職場環境であること、様々な勤務形態があることなどから、働き方や人材活躍に課題も抱えていました。
そうした中で同社は、「すべての人がやりがいをもって活き活きと活躍できる組織」を目指してダイバーシティ推進を本格化。意識改革や制度整備を進めるとともに、「介護セミナー」や「仕事と介護の両立支援Handbook」(以下ハンドブック)の導入を通じて、従業員の理解促進と職場の相互支援の意識醸成に取り組んできました。
本記事では、その取り組みの背景と、仕事と介護の両立支援へと広がった具体的な施策について伺いました。
「当社に関わるすべての人がやりがいをもって活き活きと活躍できる組織」 を支える考え方

ダイバーシティ推進における経営戦略上の位置づけと現状・目標についてお聞かせください。
八森様 当社は2017年にダイバーシティ推進をスタートしており、「企業は人なり」「個人が輝けば職場が輝き、そして会社が輝き、強くなる」という考え方をダイバーシティ推進の軸としました。そして「個人の活躍なくしては、会社の持続的な成長はあり得ない」と考え、制度作りや職場の意識改革を重視して取り組みを進めてまいりました。
トップメッセージからスタートした意識変革

ダイバーシティ推進を始めるきっかけについて教えてください。
岩田様
当時、社長のトップコミットメント「当社に働くすべての皆さんがやりがいを持って活き活きと働く組織を目指して!」が発信され、当社の取組みがスタートしたわけですが、その背景には女性活躍推進法や改正育児・介護休業法の施行がありました。会社として法に基づく対応を実施し、制度は整えたものの、従業員への周知や意識醸成が不足しているという課題認識の下、ダイバーシティ推進担当部署を新設し、ダイバーシティ推進担当者が着任、その後執行役員に就任しました。その方は女性だったので、ダイバーシティ推進担当の役員が女性であったことは、「意識変革」を促す経営から従業員に向けたメッセージになったのではないかと思います。
また、取組みスタート直後には、人事担当役員、ダイバーシティ推進室のメンバーが全国を回り、女性社員を中心とした座談会を実施しました。あわせて准管理職を中心としたワーキングチームによる意見交換も行っています。
座談会に参加した女性社員の反応はいかがでしたか。
八森様 私はその座談会に参加しましたが、キャリア採用で技術系の職種だったため、それまで男性の中で働くことに特別な違和感はありませんでした。ただ、座談会を通じて「時代が変わりつつある」という実感がありましたし、単に男性と同じように働くというだけでは不十分なのではないか、と考えるようになりました。
岩田様 当社は、業務特性上、男性比率がとても高いですし、男性社員に比べて、女性社員には機会が与えられてこなかったという側面があります。集合住宅に関わる仕事のため24時間対応、夜間対応もあるのですが、業務特性、安全配慮の観点から多くの場合、男性社員が対応するというのが標準で、女性社員も管理職でない場合、そういった対応機会は殆どなかったのではないかと考えています。
八森様
ダイバーシティ推進がスタートして、女性活躍推進の取組みに関しては当時の女性社員の多くはそれまでの環境に違和感を持っていなかったでしょうから、「何が起こるのだろう」という戸惑いはあったと思います。同時に、「これからは自分たちも主体的に考え、行動しなければならない」という意識が芽生えたのではないかと捉えています。
また、これまでの環境が女性の経験機会を結果的に減らしていたこともあり、現在でも女性管理職輩出のボトルネックになっている部分もあります。
そうした課題にはどのように対応されてきたのでしょうか。
岩田様 実際に本人と話してみると前向きな意見も多くあります。ですので重要なのは、一人ひとりとキャリアについてしっかり対話し、本人の意向を確認することと、特定の人に負担が偏らない体制を整備することだと考えています。
八森様 夜間の緊急対応は大きな案件であるほど管理職や准管理職を含め複数人で対応します。また拠点の近くに協力会社の体制も整っており、例えば男女関わらず管理職が育児中で働き方に制限があっても対応可能ですし、実際には明るくなってからでないと対応できないケースもあります。
当時、ロールモデルとなるような方はいらっしゃったのでしょうか。
八森様
当時は女性の課長職もまだ少なく、社内に明確なロールモデルがいる状況ではありませんでした。そのため、ダイバーシティ推進担当の女性役員や社外から着任された課長職の女性など、外部から着任した方々をロールモデルとしながら、管理職と准管理職を中心としたワーキングチームで意見交換を重ねていました。
私自身も当時参加していましたが、新卒で当社に入社され、キャリアアップを望む方にとっては、「道が開けた」「光が差した」と感じられるような機会だったのではないかと考えています。
wiwiwインタビューコラム
日本総合住生活株式会社様のお話から見えた変化と導入効果
今回オフィスにお伺いした際には、社内の複数箇所にワーク・ライフ・バランスに関するポスターが掲示されているほか、ダイバーシティ推進室には心理的安全性に関する宣言が掲示されており、日頃からの取り組みが職場環境にも反映されている様子が印象的でした。

ダイバーシティ推進の取り組みは、女性活躍にとどまらず、働き方全体の見直しへと広がっていきました。
その一環として、仕事と介護の両立支援にも力を入れるようになったようです。
仕事と介護の両立支援に取り組んだ背景と施策
仕事と介護の両立支援に力を入れるようになったきっかけと具体的な取り組みを教えてください。
岩田様
2017年1月の育児・介護休業法改正に伴い制度整備を行いましたが、制度理解が十分に浸透していないという課題が明らかとなりました。
2018年には、管理職を対象に、仕事と介護の両立に関する理解促進と部下支援を目的としたセミナーを実施しました。さらに、セミナー後に行ったアンケートの結果から、対象を一部に限定せず全従業員へと取り組みを広げる必要性を認識し、2019年からは外部講師(株式会社wiwiw
角田とよ子)によるセミナーを、本社・東京をはじめ、大阪、名古屋、福岡で開始するなど、段階的に施策を拡充してまいりました。
現在は、オンライン形式で実施し、全社員のほとんどが1度は受講する体制を構築しています。
また、2019年には基礎編と施設編を統合したハンドブック電子版を作成しました。電子版に加え、会社PCを使用しない環境で働く団地清掃スタッフなどにも情報を届けたいという想いから、2025年には計1,780冊を印刷・配布し、より多くの従業員に情報が届くよう取り組んでいます。
外部サービス導入による取り組みの強化
そうした取り組みを進める中で、当社の介護セミナーとハンドブック(仕事と介護の両立支援Handbook)を導入いただいた背景を教えてください。
八森様 これまでに100社の企業に対して実態調査やコンサルティングを実施されている実績があり、講師の方も先進企業から全国の自治体まで幅広い分野で豊富な経験をお持ちである点に魅力を感じました。また、あわせて制作いただくハンドブックには、そうしたノウハウが体系的に盛り込まれており、受講者の理解をより一層深めることができると考え、導入を決定しました。
セミナーとハンドブックの活用と現場での反応
セミナーやハンドブックを導入してご満足いただけた点について教えてください。
岩田様
セミナーについては、長年講師をお願いしている角田先生の明るくざっくばらんなお人柄と、幅広い事例に基づくお話が非常に印象的です。介護というどうしても重くなりがちなテーマを前向きに伝えてくださり、必要以上に不安をあおることなく、ケアラーの気持ちに寄り添いながら「一人ではない」と感じられるようなメッセージを、さまざまな形で届けていただいています。そのため、受講者の共感を得やすく、心に残る内容になっていると捉えています。
また、繰り返し受講しても新たな気づきがあるほど引き出しが多く、継続的に質の高い内容をご提供いただいている点も大きな魅力です。さらに、4月からは相談窓口の対応もお願いしており、社内では対応しきれない部分を補完いただける点でも大変助かっています。
また、ハンドブックについても、毎年の改定やセミナー内容との連動など、当社の要望に応じて柔軟に対応いただいており、実態に即した形で活用できている点に満足しています。セミナーとハンドブックを連動させ、手元で内容を確認しながら受講できる点も理解促進につながっています。

森田様 ハンドブックについては、紙と電子版の両方で活用しています。特に当社ではパソコンを使用しない職種の従業員もいるため、紙で配布し各拠点に常備することで、誰でも必要なときに閲覧できる環境を整えています。こうした従業員はセミナーでの情報提供が難しいため、ハンドブックを通じて情報を届けています。また、ハンドブックにはQRコードを掲載し、スマートフォンからも閲覧できるようにすることで、従業員が内容を確認しやすい環境を整えています。こうした取り組み全体に対して評価の声も寄せられており、私自身も家族にハンドブックを見せた際、「こうしたブックを作り、従業員がきちんと見られるようにしているのは良い会社だね」と言われたことがあります。
八森様 当社では、各階層向けのセミナーを実施しており、ダイバーシティ推進の取り組みの中でハンドブックの紹介も行っています。
岩田様 社内イントラネットには、介護に限らず各種テーマごとにアイコンを設けており、必要な情報にアクセスしやすい工夫をしています。その中の一つとして「介護コーナー」を設置しており、クリックするとハンドブックの電子版や角田先生のセミナー動画をいつでも閲覧できるようにしています。視覚的にも分かりやすく掲載していることもあり、多くの社員に活用されていると捉えています。

導入による成果と浸透の広がり
セミナーやハンドブックを導入してどのような結果が得られましたか?
八森様
導入後の効果として、介護セミナーの受講者アンケートでは、基礎編で「わかりやすかった」が97.5%、「役に立った」が93.8%、応用編ではいずれも100%と高い評価を得ています。
受講者からは、これまで曖昧だった介護保険サービスの利用手順や施設選びの考え方、費用のイメージについて理解が深まり、介護が突然発生した場合の初動を具体的にイメージできるようになったという声が多く寄せられています。
また、管理職層においても、部下からの相談に備えた知識の習得や、会社の支援制度への理解が進んだことで、職場内で介護について話しやすい雰囲気づくりにつながっていると感じています。
こうした取り組みは、介護に対する不安の軽減や早期の準備・相談行動の促進につながっており、介護離職防止の観点でも有効であると認識しています。
一方で、介護を理由とした退職の実態を正確に把握することは難しいものの、アンケート結果からは、回答者の約26%が何らかの形で介護に関わっていることが分かっています(回答率は6〜7割)。切実な悩みを抱えている社員が一定数いることも明らかになっており、これからますます増加する傾向にあると考えられるため、引き続き支援の必要性を感じています。
森田様 セミナーについては、一度きりではなく、状況に応じて繰り返し受講される方がいらっしゃいます。介護と関わりのない時期に一度受講し、実際に直面した際に改めて受講したいというニーズがあるのだと感じています。
当事者発信による意識変化
岩田様はご自身の介護経験についても社内で発信されているとお聞きしました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
岩田様
自身の介護の実態について、写真を交えて社内ポータルで発信しています。例えば、自宅に設置した見守り用のカメラの様子や、認知症対策として母に向けて日々記録しているノートの一部など、実際に効果があった取り組みを共有しています。それに対して「私もやってみます」といった声をいただくこともあります。
また、社内掲示板では、帰省のタイミングで親と確認しておきたいポイントを一枚にまとめて発信するなど、「今できる備え」を具体的に伝える工夫も行っています。限られた機会の中での家族との対話の大切さについても、あわせて伝えています。
役員である岩田様ご自身が経験を発信されていることで、社員の皆さんの意識も高まり、取り組みの広がりにつながっているのですね。
継続的な課題と今後の展望
今後の取り組みについてお聞かせください。
岩田様
育児や介護を理由として休業する男性従業員も増えてきており、休業期間が長期にわたるケースも見られます。こうした取り組みは、本人にとっても会社にとっても最終的にはメリットのあるものだと考えています。
一方で、そうした動きが広がる中で、新たな課題も見えてきています。当社の技術職は特定の資格を必要とする業務が多く、代替要員の確保が難しいという特性があります。そのため、休業による欠員が現場にとって大きな負担となるケースもあり、特に管理職からは「人手が足りない」という声が多く寄せられています。
当社では年に1回従業員エンゲージメント調査を実施していますが、その結果からも、持続可能な人員体制と組織運営の確立が課題として浮き彫りになっています。
現在は、育児や介護を理由に休業する従業員と、その間現場を支える従業員の双方に対して、どのような支援ができるか検討をしているところです。一律の制度ではなく、現場で組織を支え、頑張ってくれている従業員にしっかり報いる仕組みにしたいと考えており、制度設計の難しさも感じています。
また、「隠れ介護」を防ぐことも重要なテーマです。申告された離職の理由が介護ではない場合でも、振り返ると介護が理由だったのではないかと思うこともあります。もう少し、組織内で介護をしていることがオープンにできる雰囲気を作れればと感じています。介護を理由とした離職をゼロにすることを目標に、相談窓口の活用を推進し、社内での好事例を積極的に発信し、誰もが安心して相談できる環境づくりをさらに進めていきたいと考えています。
この取り組みは「継続すること」が何より重要だと捉えています。全員に一度で届けるというよりも、まずは一人でも二人でも確実に届けることを意識しており、その積み重ねが徐々に広がっていくものだと考えています。
また、介護は誰にとっても起こり得るものであり、その状況はケースバイケースです。仕事と両立できる環境づくりを進めていくことが重要だと考えており、そのためにも取り組みを継続していくことが必要だと捉えています。

