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ガラスの天井を打ち破るサンフランシスコ女性活躍通信-2020年1月の訪問記録


先進国の中で最も高い女性管理職比率はアメリカだ。

ところが、女性役員比率が4割を超えるフランス、ノルウェーと比べ、アメリカの女性役員比率は21.7%であるから見劣りがする。

日本では政府が女性管理職比率「2020年30%」を目標に掲げたものの、実情は14.9%(令和元年版男女共同参画白書)と遠く及ばない。

女性役員比率には至っては5.2%(内閣府男女共同参画局女性役員情報サイト)にすぎない。

 

 

とりわけ、人種のるつぼ、移民の国であるアメリカでは、セクシャルマイノリティ、人種や国籍の違いを活かす多様性社会に拓くチャレンジが際立つ。

今夏、折しも、「黒人であり、アジア系」であるカラマ・ハリス上院議員が米主要政党の正副大統領として初めて指名された。

 

 

1972年12月、20代前半の私が、資生堂アメリカ(Shiseido Cosmetics America Ltd)へ派遣された時、女性たちがキャリア形成を目指して働く姿には目を見はるものがあった。

資生堂アメリカに勤務していた女性の自宅に招かれて行った時のこと。そこにはパートナーと離婚したシングルマザー3人が一つ屋根の下で協力しながら、それぞれの子ども3人を育て・働き・大学で学ぶといった三足のわらじを履いてキャリア形成している逞しさに触発され、

わが国・わが社、わが身を振り返って女性活躍を推進したいとの当時の思いが蘇る。

 

 

2020年1月、あれから50年近くを経たアメリカの女性活躍・ダイバーシティはどんな質的変化を遂げたのだろうか。

2020年「40歳以下のトップ20」で「最も活躍する女性」に選ばれている女性経営者Nooshin Behroyanさんに会いに行った。

 

2020年1月22日、Nooshin Behroyanさんを訪ねて

 

 

同氏は、パクソンエナジー&インフラストラクチャー(以下、「パクソン」)の創設者兼CEOであり、

サンフランシスコビジネスジャーナルによれば、パクソンは、2018年のトップ10の建設プログラム会社の一つに指定された。

 

また、2019年1月から「NAWBO(女性の会社経営者全国協会)」サンフランシスコ・ベイエリア支部の代表を務めている。

 

 

NAWBOは、設立当初から「女性経営者」を支援する歴史を持つ。

1975年、「雇用機会均等法とアファーマティブアクション(1974年)」という女性活躍を支援する法律を根拠に、女性ビジネスオーナー向けの最初の支援団体として設立された。

団体の目的は、連邦政府の契約、資本へのアクセス、ビジネスに関連するその他の問題に関する情報共有にある。

発足当初は、ワシントンDCエリアで12人の女性ビジネスオーナーたちの強い意思でのスタートだった。

 

その後、1994年、女性の経営者の活躍を支援する「融資機会均等法」、

同年連邦政府取得合理化法(連邦政府調達の5%は女性起業家に与えることを目標にした法律)、

1988年女性起業家法など一連の法律が制定されたことに伴い、

現在では女性会社経営者をサポートしトレーニングプログラムや教育支援を通じて、女性経営者が強力なリーダーシップを発揮でき、増加するよう協力を惜しまず、教育する活動を積極的に行っている。

今や、民主党と共和党議員、メディア、連邦政府エージェンシー、ホワイトハウススタッフ、および実業界に大きな影響力を持っている。

 

それでは、肝心の「最も活躍する女性」としてNooshin Behroyanさんが選ばれた理由は何か。

 

Nooshin Behroyanさんは30代後半の若い女性経営者だ。イラン出身で2人の子どもを育てているシングルマザー。

名門カリフォルニア州立大学発祥の地にあり、最も古い歴史のあるバークレー校で建築学を学び、

デービス校では土木および環境工学の博士号を取得された努力家である。

ダイバーシティを受け入れ、多様性を組織の活性化につなげることで企業のパフォーマンスは向上するとの信念を持って、歩んで来られた。

 

同氏は、戦略的雇用と称して自社の女性エンジニアと退役軍人が活躍できるようにする職業訓練プログラムを開発。

トレーニングとスキルを活用して生産的なキャリア構築を可能にするイノベーションを興した。

とりわけ、この間、組織における性別の多様性と労働力の平等を促進して自社の女性役員比率を上げたことで、2019年現在、2,700万ドルの売上高へと飛躍させた。

 

また、米国およびカナダの石油とシェールガス等パイプラインの「安全性向上」に大きく寄与する等大手エネルギーコンサルティング会社の1つにパクソンを急成長させた。

 

こうしたダイバーシティ経営を実践し、実績のあるNooshin Behroyanの真骨頂は、意思決定ボードに占める「女性役員」を増やす支援活動に向けられたところにある。このような積み重ねが、サンフランシスコのガラスの天井を打ち破ってきている。

 

次回は、「女性経営者Nooshin Behroyan(スーシン・ベロヤン)の挑戦」と題して、どのようなプログラム、教育支援に取り組んできたのか、

また、女性経営者支援団体との協働や政府対応はどうだったのか、つまり、女性経営者成功の秘訣について発信したい。

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山極 清子

株式会社wiwiw代表取締役会長・昭和女子大学客員教授・経営管理学博士(立教大学) 1995年財団法人21世紀職業財団両立支援部事業課課長に出向後、資生堂の女性活躍の礎を築く資生堂初の女性人事課長に就任。2009年3月まで資生堂男女共同参画リーダーとして資生堂女性管理職登用のアクションプランなど実施。また、これらの仕事と並行して大学・大学院を修了。 2010年、wiwiw社長執行役員、2018年代表取締役社長、2019年現職に至るまで、25年余り一貫して女性活躍とダイバーシティ、仕事と育児・介護との両立の三位一体で働き方改革に取り組んできている。

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